動脈瘤・動脈硬化検出手法の研究
非侵襲診断法による拍動流下での血管壁特性評価
動脈硬化と動脈瘤
動脈硬化
動脈硬化は、人間の血管である動脈の劣化現象ととらえることができます。 硬化の原因は、簡単に説明すると、血液中のコレステロールが血管の内側に溜まってしまうことです。この結果、血管の弾性(柔らかく変形が元に戻りやすい性質)が失われることです。 実際にはコレステロールだけでなく、生活習慣やストレスなど様々な要因が関係しています。 このため「血管の硬さ」を測ることで、動脈硬化の進行度を評価することができます。 *病気については、医学博士の解説をお調べください。
動脈瘤
動脈瘤は、動脈が部分的に膨らむ病気です。色々な部位に発生し、また形(発生状況)も違うので、発生部位や形状ごとに呼び名があります。 共通するのは、血管が膨らんで壁が薄い部分(弱い部分)ができて、そこから欠陥が破裂する危険があることです。 血管が破裂すると、かなり高い確率で死亡に至ったり、助かっても後遺症が残ることが多いようです。 動脈硬化の進行に伴って発生することも多く、早期発見・早期治療が重要な病気です。 *病気については、医学博士の解説をお調べください。
研究方法
血管の粘性
「血管の硬さ」と聞いて何を思い描くでしょうか?「硬い=変形しにくい」と思いますよね? 高校までの物理ではその通りです。でも、低反発クッションを思い浮かべてください。頭を乗せた後に、ジワジワ~っとクッションに包まれる感じがすると思います。 この「ゆっくりと変形が進む」というのがポイントです。変形しないのではありませんが、一瞬では変形しません。さて、これは「硬い」のでしょうか? このように、物質の変形にも時間の概念が有って、変形の応答性を「粘性」として評価しています。 「粘性」というと、油やハチミツのような液体を想像するかもしれませんが、固体にも粘性はあるんです。 血管の場合、血圧によって血管は膨らみますが、心臓の拍動により血圧は常に変動しています。 変化する血圧に瞬時に反応して膨らむか、変形が遅れるため膨らみにくくなるか。 動脈の硬さは「動脈の粘性」を評価する必要があるのです。
DPC
血管の粘性を測るために、DPC法が開発されました。これは、超音波ドップラーを使って血管の変形速度(拡張速度)から加速度を求め、加速度の変化から粘性を評価する方法です。 この機械のポイントは、非侵襲短時間で計測ができる事です(計測は15秒)。皮膚を切ったり、針を刺したりしないので、検査がとても簡単です。 このため学校や職場の健康診断の様に、短時間で大勢の方を検査することが可能です。 ドップラー効果、速度、加速度、粘性。すごく物立っぽいですよね。機械工学科で動脈硬化の研究というと驚かれますが、まさに機械工学の知識が必要とされる分野なのです。
動脈瘤検出
血管の拡張は血圧の変化に従っています。血管の拡張速度を測っていると、血流の乱れによる血管拡張速度の乱れを計測できることが分かってきました。 血流の乱れの原因は色々考えられますが、動脈瘤もその原因の一つです。 動脈瘤に特有な「血流の乱れ」を検出し、早期発見・早期治療に繋げることが可能となります。
実験方法
3Dプリンタ製の動脈瘤
人や動物を使った研究は、医学部でないとできません。また、特定の現象を再現させたり比較する場合、全く同じ状況を作り出すことが重要になってきますが、生体実験では不可能に近いです。 我々の研究室では、ゴムのような弾性材料を使った摸擬動脈瘤を3Dプリンタを使って作成し、「拍動下の血流の乱れ」を再現出来る実験装置を自作して、実験を行っています。 実験装置の自作・改良にも3Dプリンタを活用しています。3次元CADソフトによる設計から3Dプリンタによる試作まで、モノ作りの現場の腕試しも研究の醍醐味です。